面談が終わったあと、手元のメモを見返して「結局、次に何をするんだっけ」と整理し直す。スタッフへ引き継ぐときも、メモだけでは流れが伝わらず、結局もう一度口頭で説明する。30分の面談で話があちこちに飛ぶと、あとから読み返すだけでも時間がかかります。

士業事務所では、助成金、入退社、必要書類、次回確認の話が同じ面談の中で混ざることがあります。1件ごとは大きな負担に見えなくても、面談、議事録、問い合わせ、社内共有が重なると、記録整理は後回しになりがちです。

この記事で試すのは、散らかった面談メモを、要点・確認事項・次の対応に分けるたたき台としてAIを使う方法です。本文中の「AIへのお願い文の例」と「AI出力例」は、そのままコピーして試せる形にしています。

ここで扱うのは、法律判断や税務判断などをAIに任せる使い方ではありません。実名や相談内容をそのまま入れず、まずは架空メモで「整理のされ方」を見るところから始めます。

まず結論: 今日中に架空メモ1本で試せる

この記事を読むと、実案件を使わずに、架空メモ1本でAIのメモ整理を試せます。面談後のメモを読み返す時間を減らせるか、スタッフへ引き継ぎやすくなるか、次にやることが見えやすくなるかを確認できます。

試すことはシンプルです。

  1. 記事内の架空メモをコピーする
  2. AIへのお願い文と一緒に入力する
  3. 返ってきた整理案を、要点候補、確認事項候補、次回までの対応候補として人が見直す

ここで確認したいのは、AIが正しい結論を出せるかではありません。AIに判断させるのではなく、人が確認しやすい形に整理することです。

散らかった面談メモをAIで要点・確認事項・次の対応に分けるイメージ

実案件の情報を入れるのは、事務所内のルール、利用するAIサービスの条件、確認者、保存ルールを確認してからにします。最初は、この記事の架空メモだけで十分です。

最初は実案件ではなく、架空メモで試す

面談メモには、相談者、相手方、関係者、会社名、住所、金額、時期、案件経緯など、組み合わせると個人や案件が推測できる情報が含まれやすいです。

そのため、最初から実案件のメモをAIに入れるのではなく、架空の面談メモや社内研修用のサンプル文で試します。実名を入れない、相談内容をそのまま入れない、AIの出力をそのまま判断に使わないという前提で、どのような整理案が返ってくるかを見ます。

まずは、次の範囲に留めるのが現実的です。

  • 架空メモを「要点候補」「確認事項候補」「作業候補」に分ける
  • 社内研修用のサンプル文を見出し化する
  • 実在情報を含まない短いメモで、AIへのお願い文を試す

実務データを扱う前には、入力してよい情報、確認する担当者、保存ルール、利用するAIサービスの条件を事務所内で確認します。

AIに頼む範囲は「整理の下書き」まで

AIに頼みやすいのは、判断ではなく整理です。

たとえば、次のような範囲なら試しやすいです。

  • 面談メモの話題を見出しに分ける
  • 人が確認するための要点候補を抜き出す
  • 次回確認したいことを分ける
  • 議事録の話題と未確認事項を整理する
  • 作業候補を箇条書きにする

社労士、司法書士、行政書士、税理士などの事務所でも、相談背景、必要資料候補、次回確認事項候補の整理に使う範囲なら、自分の業務に置き換えやすいはずです。

一方で、可否判断、専門的な助言、顧客への回答の確定、公式な書類作成・提出の判断には使いません。AIの整理案は、担当者が確認するための下書きです。

実務データを扱う前に確認したいこと

実務データを扱う場合は、氏名だけを見ればよいわけではありません。

会社名、住所、金額、時期、案件経緯、家族や従業員に関する情報などの組み合わせで、個人や案件が推測できることがあります。特定される情報を伏せる、短く要約する、といった対応だけで十分とは限りません。

少なくとも、次の点は事前に確認しておきます。

  • 利用するAIサービスの規約やデータの扱い
  • 個人向け、法人向け、APIなど利用形態ごとの条件
  • 顧客との契約や守秘義務に関する事務所内の扱い
  • 事務所内で入力してよい情報の範囲
  • 出力を確認する担当者
  • 入力内容や出力結果の保存ルール

ローカル環境で動くAIや事務所内専用ツールでも、導入形態だけで安全とは判断しません。入力してよい情報、確認者、保存ルールを事前に決めることが必要です。

AIへのお願い文の例

「プロンプト」とは、AIに出す指示文のことです。難しく考えすぎず、「このメモをこう整理してください」とお願いする文章だと思えば十分です。

以下は、実案件ではなく、練習用の架空メモを使う例です。実在の会社名、個人名、住所、金額、案件名は入れていません。

今すぐ手元のメモで試すなら、事務所ルールがまだ決まっていない場合は、顧客名を「A社」、個人名を「甲氏」、金額を「○○円」、日付を「○月○日」のように置き換えてからAIに入力します。実際の情報をそのまま入れずに、整理の流れだけを練習しやすくなります。

下の枠内をコピーして、AIに貼り付けて使います。

以下は、士業事務所での練習用に作った架空メモです。
実在の相談者、会社、案件、住所、金額は含まれていません。

このメモを読んで、次の6つに分けて整理してください。

1. 要点候補
2. 確認が必要なこと
3. 不足している資料・情報
4. 次回までの対応候補
5. スタッフへ引き継ぐときのメモ
6. 人が判断・確認すること

法律判断、税務判断、労務判断、登記判断、許認可判断、助言の確定はしないでください。
不明な点や判断が必要そうな点は、「人が判断・確認すること」に分けてください。

【練習用の架空メモ】
午前に架空の小規模事業者A社の甲氏と面談。最初は助成金まわりの話だったが、途中から従業員の入退社、必要書類、社内で誰が資料を持っているかの話に移った。
甲氏は「去年の書類は一部あると思う」と話していたが、最新のものがそろっているかは不明。入社日や退職日も少しあいまい。
経理を手伝っている乙さんが資料を把握しているかもしれない、という話も出た。
次回までに、何をA社側で探してもらうか、こちらから何を確認するかを整理したい。
スタッフへ引き継ぐなら、相談内容、足りない資料、次回確認すること、担当者が判断することを分けたい。

このお願い文では、AIに結論を出させていません。散らかったメモを、人が確認しやすい引き継ぎ用のたたき台に分けてもらうだけです。

AI出力例

上の架空メモを入れると、たとえば次のような整理案が返ってくるイメージです。実際の案件名ではなく、A社、甲氏、乙さんのような仮名で書いています。

AIから返ってくる整理例

1. 面談の要点

  • A社の甲氏から、助成金に関する相談があった。
  • 面談の途中で、従業員の入社予定、退社済み社員の書類確認、必要資料の所在にも話題が移った。
  • 昨年分の書類は一部ありそうだが、最新の資料がそろっているかは未確認。
  • 資料の一部は、経理を手伝っている乙さんが把握している可能性がある。
  • 入社日、退職日、資料の対象期間にあいまいな点が残っている。

2. A社・甲氏に確認したいこと

  • 入社予定者の入社日。分かっている場合は、○月○日のように日付で確認する。
  • 退社済み社員の退職日。記憶ではなく、書類や社内記録で確認できるか。
  • 最新の賃金台帳、出勤簿、雇用契約書があるか。
  • 昨年分と最新分で、どの資料が手元にあり、どの資料が不足しているか。
  • 乙さんが管理している資料があるか。ある場合、次回までに確認してもらえるか。
  • 助成金に関する資料を確認する前に、A社側で分かる範囲をどこまで整理できるか。

3. 次回までの対応候補

  • A社へ、確認してほしい資料候補を短い一覧にして送る。
  • 日付があいまいな箇所を「入社日」「退職日」「資料の対象期間」に分けてメモする。
  • 甲氏に、乙さんへ確認してほしい資料の有無を伝える。
  • 事務所側では、A社から資料が届いたあとに確認する項目を別メモにする。
  • 助成金の話は、あとで資料を見ながら確認する。

4. 担当スタッフへの引き継ぎメモ

A社の相談は、助成金の話から始まりましたが、従業員の入退社と必要書類の確認も含まれています。

現時点では、入社日、退職日、最新資料の有無があいまいです。甲氏だけでなく、経理を手伝っている乙さんが資料を把握している可能性があります。

次回までに、A社へ依頼する資料候補と、事務所側で確認する項目を分けておくと引き継ぎやすいです。

5. 人が確認するポイント

  • 助成金に関する可否や案内内容。
  • 必要資料が本当にそろっているか。
  • 入社日、退職日、金額、対象期間に誤りがないか。
  • A社へ追加確認すべき内容が漏れていないか。
  • 相談者へ送る文面が、事務所のルールや担当者の判断と合っているか。

この出力例でも、AIは「正解」を出していません。担当者が確認しやすいように、散らかったメモを棚分けしているだけです。

実際に使うときは、この整理案をそのまま記録にせず、担当者が読み直して、不要な項目を消し、足りない確認事項を足します。

導入の基本ステップ

実際に試すときは、次の順番にすると進めやすいです。

  1. 実案件ではなく、この記事の架空メモをそのまま使う
  2. AIへのお願い文と一緒に入力し、整理案を出してもらう
  3. 要点候補、確認事項候補、作業候補の分け方が自分の事務所に合うか見る
  4. 足りない見出しや不要な見出しがあれば、お願い文を調整する
  5. 実務データで試す前に、入力してよい情報、確認者、保存ルール、利用サービスの条件を確認する

この段階では、AIで業務を自動化することを目標にしなくてよいです。まずは、面談後のメモ整理を少し楽にできそうかを見ます。

使用前 / 使用後のイメージ

この記事で試す範囲は、次のような変化です。

面談後によくある状態AIで整理した後の状態
助成金、入退社、必要書類の話が混ざっている話題ごとに「要点候補」「確認事項候補」「次回対応候補」に分かれている
スタッフに何を引き継げばよいか分かりにくい「不足資料」「確認する相手」「担当者が見る点」が見える
メモを読み返しても、次に何をするか思い出す必要がある次回までの対応候補が一覧になっている

薄いメモをきれいに見せることが目的ではありません。次に何を確認するか、誰が判断するかを見えやすくすることが目的です。

公式情報や事務所ルールの確認

AIツールの規約やデータの扱いは変わることがあります。実務利用の前には、利用中のサービスの公式情報や契約条件を確認してください。

実務に入れる前の確認は、難しい制度論から始める必要はありません。まずは、次のような点を事務所内で確認します。

  • 入力内容やファイルの扱い
  • データ利用条件
  • 保存期間や履歴の扱い
  • 個人向け、法人向け、APIなど利用形態ごとの違い
  • 事務所内の入力可否
  • 出力の確認者
  • 記録や引き継ぎに使う場合の保存ルール

また、士業団体や公的機関の公開情報で、生成AI利用や情報管理に関係する注意点があるかも確認対象になります。

今日できる小さな一歩

今日やることは、実案件を使うことではありません。この記事の「AIへのお願い文の例」と「練習用の架空メモ」を、そのままAIに入力してみることです。

試したら、出力された整理案を見ながら、次の3つだけ確認してください。

  1. 要点候補は、面談後に見返しやすい形になっているか
  2. 確認事項候補は、次回面談や引き継ぎに使えそうか
  3. 作業候補と、人が判断・確認することが分かれているか

そのうえで、自分の事務所なら見出し名をどう変えるか、どの項目を追加したいかを考えます。

良さそうなら、次は社内研修用のサンプル文や、実在情報を含まない短い社内メモで試します。実務データを入れるのは、事務所内ルール、利用サービスの条件、責任者確認が済んでからです。

まとめ

士業事務所で面談メモや議事録をAIで整理するなら、まずは実案件ではなく、架空メモで小さく試すのが現実的です。

最初の目的は、AIに判断させることではありません。面談後のメモを、要点候補、確認事項候補、作業候補に分け、人が確認しやすくすることです。

今日試すなら、この記事のプロンプト例をそのまま使ってください。出力を見て、自分の事務所ならどこを直すかを確認するだけでも、実務に入れる前の感触がつかめます。

参考情報

AIに実際の相談メモや顧客情報を入れる前には、利用するAIサービスの規約やデータの扱いを確認しておくと判断しやすくなります。この記事では実名や相談内容をそのまま入れない前提で紹介していますが、事務所のルールを決めるときは、以下のような公式情報も参考になります。

実際に使うAIサービスや所属団体によって確認すべき内容は変わるため、事務所内のルールや契約条件とあわせて確認してください。

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